2016/03/11

怪物

 太陽。表面温度約6000度の灼熱の星。こんな星にも、生命がいた。

 熱エネルギーが、磁力波に変わり、低温になっている領域があった。そこでは、多量の水の分子が存在した。それらの水の分子に守られて、生命が育ったのだった。

 それらの生命は、磁力波を餌にした。知性は、発達しなかったが、苛酷な環境が、生命に、強烈な生存力を与えた。

 生命は、温度を操ることができた。絶対零度から、2万度まで温度を変化させることができた。
 太陽の表面は、決して安定はしていなかった。炎の嵐の連続だった。生命が、大きくなるには、凄まじい熱の暴風に耐える能力を身に付ける必要があった。生命は、自分の周りの温度を様々に変化させることによって、熱嵐から身を守ることができるようになった。

 そうなれば、生命が、巨大化するのは、すぐだ。餌の磁力波は、無尽蔵にある。生命は、淡路島大の大きさに成長した。

 やがて、生命は、いや、怪物たちは、地球から発せられる、電磁波に、食欲を刺激されるようになった。様々な種類の電磁波は、怪物たちの食欲をそそった。怪物たちは、太陽の単調な磁力波に食傷していた。

 怪物たちは、マッハ2まで、瞬時に、自分自身を加速することができた。この能力も、突然襲ってくる、熱嵐から身を守るためのものだった。
 もちろん、マッハ2では、太陽の引力圏から脱出することはできない。怪物たちは、何度も、地球に、飛び立とうとして、挫折した。

 怪物たちは、知性は低かったが、粘り強さはあった。いつか、加速を何度も続ければ、太陽から飛びたてることに気付くだろう。

 こうして、地球生命の、最後の日が近づきつつあった。いわば、文明が、破滅を招きつつあった。

 これを皮肉と言うか、それとも、運命と言うかは、その人の趣味の問題だろう。

1995/05/29