2016/03/14

サングラス ver. 1.0

 夜。繁華街。人混み。

 駆ける人。追いかける男。

 男の身体が、サングラスの女を掠める。女は、構わず、歩き続ける。男は、相手に追い付く。組み伏せ、手錠を掛ける。

 いいことがあれば、男はいつも恋人に報告した。受話器を上げ、カードを入れる。恋人ではなく男の低い声がする。ゆっくりと受話器を戻す。終わりだ。

 女は、外国人の溜まり場に行く。何人かを選ぶ。服と靴を買い与える。マンションに連れて行く。白い粉を、外国人達の靴の踵、服の折り返し、胃袋に隠す。

 空港。
 女は、搭乗手続きを済ます。外国人達は、全員消えている。
 女は、一瞬、うろたえる。事態を把握すると、溜まり場に引き返す。

 コイン・ロッカー。
 女は、拳銃を取りだし、バックに入れる。

 溜まり場。
 女が通り過ぎると、影の中から、1人出てきた。そのまま、女を跡ける。

 下り階段。
 女は、駆け下りる。相手も、走る。
 階段の下では、待ち伏せがあった。女は、冷静に、正確に、拳銃を撃つ。轟く銃声。

 女は、そのまま、街の中へ、疾走する。煌めく、ハイヒールの輝き。

 男は、酒場にいる。理解が足りなかったんだ。今度入ってくる人に恋しよう。期限のない恋にしよう。

 サングラスの女が、入って来る。男は、女の隣に腰掛ける。
 石は好きかい?どうして聞くの?君を知るためさ。
 女は、男を見つめる。
 人を知ろうとしても、無駄だし、人を知れば、不幸になることもあるわ。

 女は、サングラスを外す。麻薬のディーラーと刑事が向かい合う。

 銃声。
 男は残り、女は去る。

1995/07/15