まだ、日中の気温は、30度以上に上がるが、確実に秋の気配が感じられる。
山奥。小屋。
小屋の中には、ベットと椅子とテーブルがある。
ベットに横たわる男と、椅子に腰掛けている女。
女は、タバコを取り出す。マッチを擦る。タバコに火をつける。
古風だな。
女は、一瞬考える。
ライターだと、臭いがタバコに移るわ。
女は、立ち上がり、窓に近づく。窓を開ける。
女は、風を頬に感じる。風は、冷たい。
女は、冬の寒さを思う。
女は、窓を閉める。再び、椅子に腰を下ろす。
タバコの灰を、テーブルの上の灰皿に落とす。
冬は、嫌い?
男は、しばらく、天井を見つめる。
ああ。冬は、人の温もりを恋しがらせる。だから、冬は嫌いさ。
女は、男を見つめる。
男は、女に視線を向ける。傷ついた身体が、少し痛んだ。
ありがとう。君がいなかったら、自分が冬が好きかどうかも考えることができなかった。
女は、なんでもないという風に、首をゆっくりと横に振る。
男は、いらずらっぽい表情を浮かべる。
ともかく、君は、僕の全てを知ったわけだ。
女は、一瞬考え、顔を赤らめる。
男は、微笑むと、そのまま寝入った。
男は、幸福な夢を見ている。
女の手が、男を起こす。
男は、自分が見た夢について話そうとして、女の厳しい表情に気が付く。
女の右手には、拳銃。
男は、黙って頷く。
女は、左手の指を3本立ててみせる。
敵は、3人か。
女の動きが、止まる。
女の額を、銃弾が、打ち抜いている。
男は、すばやくベットから、抜け出す。
盾にするために、女の身体を横たえる。
女の拳銃は、男の手に、ぴったりと収まる。
男は、女の髪を優しく撫でると、気配を消した。
1995/09/02